職人魂×新発想!伝統的な製造技術に加えて独創的な製品開発のアイデアも

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「他社にはないもの」で、技術を磨く

こんにちわーっ! どーも、『おおたシゴト未来図』レポーターのハセガワです。では今日もいきますよー! 今回お邪魔するのはこちらの会社! ジャカジャン!!

太洋塗料株式会社の本社

はい、太洋塗料株式会社さんです。会社は京浜急行空港線・穴守稲荷駅から徒歩約20分。もしくは、京浜急行バスの「東糀谷六丁目」から徒歩5分。って、アレ? つい最近もこの辺に来たような…。実は太洋塗料がある場所は、『おおたシゴト未来図』にもよく登場する工業アパート「OTAテクノCORE」のお隣なんですね。大田区ってホント、ものづくりの集積地なんだなぁ。
というワケで、この辺の地理に詳しくなりつつあるハセガワですが、太洋塗料はどんな会社さんなんでしょうか?

代表取締役社長 松村正浩氏

「弊社は横断歩道用の塗料などを手がけてきた会社なんですよ」と説明してくれたのは、代表取締役社長の松村正浩さん。いきなり社長さん登場で、ちょっとビックリしましたが、笑顔の素敵な方です。

松村社長のお話によると、太洋塗料の創業は1951(昭和26)年。当時は油性塗料を製造していたそうです。実は、当時の塗料は乾くのに時間がかかったんだとか。昔の映画を観ると、よく「ペンキ塗りたて」なんて張り紙を見かけますよね。
でも今は、合成樹脂を使った水性塗料を開発したので、数時間で乾いてしまいます。また水性となったことで環境への負荷も減ったそうです。
一般的に、多くの企業が環境面に配慮するようになったのは十数年前頃からですが、ずいぶん前から環境への意識が高かったんだなぁと、まずは好印象。

他には何か、思い出深いお仕事ってありますか?

自動車のエンジンが騒音の激しい空冷だった頃、某自動車メーカーの車体にウチの塗料が使われました

それは外装ということですか?

いえ、車体の内部に塗ることで、遮音の役割を果たしたんです。当時は重量制限も今ほど厳しくなかったから、ずいぶんと厚く塗りましたね

へぇー。塗料って、そういう使われ方もするんですね

この他にも、さまざまな塗料を手がけてきたそうです。中でもニーズが高かったのが、横断歩道だとか!
確かに、ときどき道路に白い線を引いている光景を見かけますよね。そういえば、こちらの会社の入口近くにもありました。

道路の白線

日本中の横断歩道の塗料を製造すれば、ものすごい量になるんじゃないかと思ったら、そういうわけではないようです。
横断歩道用の塗料は、国の決めた製造法で、各塗料会社が製造しているのだとか。しかも、最近の横断歩道は昔とちょっと違うのです。何が違うと思いますか?
実は以前の横断歩道は、縦と横の線で構成された「はしご」のようなデザインでしたが、最近のは縦のラインがないんです。大した変化ではないような気もしますが、このデザイン変更が全国の横断歩道で行われたことで、使用する塗料の量が大幅に減ったんですって。これは大変なことじゃないですか、松村社長!

グッドデザイン賞を受賞したマスキングカラー

そこで太洋塗料では、横断歩道用の塗料も製造しつつ、他では作れないようなオリジナルの製品の開発に乗り出したのだとか。たとえばこのマスキングカラー。太洋塗料が製造して、大手DIY店でも販売されている、人気商品です。

速乾性のある塗料に粘度を高めるといった工夫を施したこの商品、ポイントは「塗り終わったら剥がすことができる」点にあります。

マスキングカラーを剥がす

ほら! クリスマスとかのデコレーションや、ショップのディスプレイにも最適ですね。太洋塗料にとっては初めてのB to C製品だったそうですが、売り上げも好調。2013年に発売されたこの製品、その年のグッドデザイン賞を受賞したそうです。また海外での評価も高く、2014年のIFデザインアワードにも選ばれたのだとか。

マスキングカラーで絵を描く

私の描く絵のレベルは置いといて、他にはないオンリーワンの製品ですよね。すごいブレイクスルーだなぁ。

また、太洋塗料の製品は他にもさまざまな場所で使われているそうです。たとえば改修が終わった歌舞伎座の外壁や、航空宇宙産業の分野など。「他にはないモノ」を目指した結果、他社では真似できないような技術が蓄積されて、個性の光る会社になったってコトなんでしょうね。

先輩社員の後を継ぎ、職人に

では現場で活躍する社員の方にも話を聞いてみましょう。今回ご登場いただくのはこの方! ジャカジャン!!

伊勢本さんとハセガワ

伊勢本優さんです。実は伊勢本さん、取材が始まる前に細かなセッティングを行っていたときも、上司の皆さんから「おーい、イセモッちゃん」と何度も呼ばれて、いろいろお手伝いをしてくれていました。もしかして、愛されキャラ?

伊勢本 優(いせもと ゆう)さん
製造部所属。2015年入社。広島から上京して大田区の専門学校を卒業。大田区が主催する合同企業説明会で太洋塗料と出会い、入社を決意した。学生時代からずっと蒲田に住み続け、休日は動物園や植物園巡りをする毎日だとか。「大田区って自分の故郷にちょっと似ていて、都会一辺倒ではない点が落ち着きます。その一方で、都心にも近いのがいいですね」

伊勢本さんは、学生時代にどんなことを学んでいたんですか?

化学に興味があったので、分析化学を学んで、その後に化粧品について深く研究していました

エッ!? なんか意外。化粧品の研究ですか? そして就職先は塗料の会社なんですね

はい。学生時代は顔に塗るものを研究して、今は壁に塗るものを作ってます

…伊勢本さん、それ鉄板ネタにしてるでしょ!

入社4年目の伊勢本さんは、入社当初から製造部門に所属し、さまざまな製品作りに携わってきました。もちろん最初はなかなか上手くいかず、苦労も多かったそうです。塗料の色は成分の微妙な配合の違いで変わってしまったりするのだとか。計算ミスをしてしまったり、作った塗料をこぼしてしまったり。時には商品まるまる一個を台無しにしてしまったこともあったそうです。
ミスの連続で落ち込む伊勢本さんを優しく見守り指導してくれたのが、上司の皆さんだったとのこと。

伊勢本さんと上司

そして入社から半年近く経った頃、伊勢本さんにある辞令が下ります。それは長年勤めてきた先輩社員が定年で退社するにあたり、塗料配合などの技術を受け継いで、その先輩社員の後を引き継ぐということ。 いやいやいや、それってビジネスの世界の話じゃなく、もはや職人の世界の話でしょ。一子相伝的な。

工場全景

伊勢本さんの一日は、この手前の釜のようなものに塗料を入れるところから始まります。分量通りに塗料を入れてザックリとかき混ぜたら、後ろのほうにある機械を通すことで塗料をより滑らかにするのだそうです。
その後ろの機械の名称は「スーパーミル」。中にはガラスのビーズが入っており、そのビーズが塗料を滑らかにするために欠かせないのだとか。

スーパーミルでの作業

簡単なことのようですが、塗料は配合を少し変えただけで色合いが大きく変わります。最初は100ccのビーカーレベルで試験的に配合したものを、実製作では1トンぐらいの量で作るので、数値通りに配合してもなかなか同じ色が出ないといったこともあるとか。しかも、気温によっても色の出方は変わってくるらしい。 そして色の配合がどうとか言う以前に、塗料の詰まったドラム缶の重いこと重いこと! 伊勢本さんはドラム缶を斜めに傾けて器用に転がしていきますが、素人にはとても真似できません!

そんなさまざまなノウハウを、先輩社員から受け継いだ伊勢本さん。黙々と塗料を練っている様子は、すでに一人の「職人」でした。

作業風景

任せてもらえることが、やりがい

そんな伊勢本さんにとって、この仕事のやりがいってどんなことなんでしょう?

作業風景

日頃、どんな部分に仕事の面白みを感じていますか?

配合が上手くいくとかいろいろあるんですけれど、以前なら業務の依頼を受けても、上司から心配されて何度も確認に来られたりしたんですが、心配されなくなったことでしょうか

もう『イセモッちゃんに任せておけば大丈夫だ』って感じなんですかね?

どうだろう? 社員のみんなにそう思ってもらえたら嬉しいですが

もう立派な職人さんじゃないですか!

また、大きな釜で塗料を練って、大きなドラム缶に詰めるといった、全体的にスケールが大きい部分も、仕事をしていて何だか楽しいのだとか。

実は伊勢本さんがこの会社、そしてこの仕事を選んだ背景には、中学校の頃に体験した工場見学があるそうです。機械工場や自動車工場など、たくさんの工場を見学した伊勢本少年。中でも一番面白かったのが石鹸工場だったとか。化学工場のもつ独特な雰囲気にやられちゃったみたいなんです。なるほど、そういう原体験があって、今があるわけですね。
そしてこの会社を選んだということは、言ってみれば伊勢本さん、初志貫徹じゃないですか!

先輩にアドバイスを受ける

正確さが大事でありながら、気温の変化によって塗料の配合を調節したりというように、職人的な部分が多分にあるこの仕事。ちなみに伊勢本さんは入社時に、松村社長から「いろんな仕事を覚えてほしい」と言われたそうです。そうしたこともあり、これからもできる限り、この会社のいろんな仕事を覚えていきたいのだとか。
たとえば横断歩道用の塗料の配合も、そんな伊勢本さんの目標のひとつです。

横断歩道用の塗料を運ぶ機械

横断歩道用の塗料は、実は乾燥しているんですね。この機械は袋詰めされたその塗料を、出荷用に並べる機械。いつかはこういう機械も操作できるようになりたいと伊勢本さんは言います。
いや、塗料の配合だってきちんとできるようになったんだから、きっとこの機械だって使いこなせるようになれるに違いありません。

作業を見守る伊勢本さん

あ、最後にもう一つ、この会社の素敵ポイント。屋上に上がると羽田空港が間近に! 飛行機があんなに大きく! かなり小さいけど東京タワーもスカイツリーも見えます! 夏は花火がキレイだろうなぁ…。

屋上で語る二人

塗料の製造会社には、「THE 町工場」といったイメージを持っていましたが、マスキングカラーのように今の時代にマッチしつつ、全く新しい製品を生み出すなど、太洋塗料はミライの「seeds(種)」がたくさんある会社だと感じました。
松村社長が言う通り、これから数年で新たなビジネスの柱が生まれそうな匂いがプンプンします。もしかすると、あなたのアイデアだって形になるかもしれません。

太洋塗料株式会社

未来図
3年後
これからの3年間は、「売上および利益を伸ばし、その先のビジョンを確かなものとするための期間」と捉えています。そのために、まずは社員数を増やすと同時に、新たな製品を開発して社会に送り出す必要があります。そうやって10年後への基礎固めをしていかなければいけないと思っています。
10年後
「10年後には、自分たちはいなくなってるからなぁ」と語る松村社長。数年前に年配の社員が辞めた後に若手が仕事を受け継いだところ、見違えるほどの成果を出したということがありました。そのことで若手を登用することは重要だと感じたので、完全に若い世代へのバトンタッチを終え、その年代が萎縮することなく活躍できる場を作りたいと考えています。
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