機械加工の現場は、想像以上にハイテクだった!
大田区は通勤でいつも通っているんですが、実力ある企業がいっぱいあるんだなぁーと、最近実感しています。こんにちは、『おおたシゴト未来図』レポーターのコンドーです。今回僕がお邪魔しているのは、「株式会社マテリアル」。
京浜急行線・六郷土手駅から徒歩12分ほど。駅名の通り多摩川の土手もすぐ近くにあって、ちょっとのどかな雰囲気です。
でも、マテリアルって直訳すると「原料」みたいな意味なんだけど、一体どんな会社なの?
この本社は一階が工場で、二階が事務所とのこと。他にも近所に二つの工場があるそうです。でもこの本社、外観がちょっと個性的で、いわゆる「町工場」とはかけ離れてるなぁと思ったら、ロボットアニメに出てくるロボットをイメージしているそうです。そう言われてみれば……似てるかも?
前置きが長くなりましたが、今回お仕事について話してくださるのは加工課でリーダーを務める竹内祐介さんです。って、背が高っ!
- 竹内 祐介(たけうち ゆうすけ)さん
- 加工課リーダー。高校卒業後はフリーターとしてさまざまな仕事を経験。そうした中で「ものづくりに携わる仕事がしたい」と思うようになり、21歳でマテリアルに入社して現在14年目。材料部門、検査部門を経て、念願だった加工部門に異動。現在は加工課のリーダーとして、本社工場のスタッフを束ねる、頼れる「アニキ」的存在です。
早速ですが、マテリアルってどんな仕事をしているんですか?
「機械の部品などを製造する、機械加工を行っています。金属を加工していくわけですが、加工方法を大きく分けると、溶接のように足していく方法と、削ったりして減らしていく方法があるんですね。ウチは減らしていくほうで、マシニングセンタという機械を使って主に切削加工や穴開け加工を行っています」
マテリアルでは機械加工によって通信機器や航空機など、さまざまな製品の部品を製造しているそうです。手がけている製品の中には防衛機器などもあるのだとか。
あ、この機械がそのマシニングセンタ。これは、板材やブロック材にフライス加工や穴開け加工などを行って、製品に仕上げる機械です。
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加工の過程を機械に入力すると、後はこのマシニングセンタが加工して、製品が完成するんです
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機械加工って、工場の人が油にまみれながら金属を削ったり穴を開けたりしているってイメージだったんですが、とってもハイテクなんですね
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はい。僕らも一日の半分はパソコンに向かっています
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なるほど。機械加工はマシニングセンタ任せの部分も多いってことでしょうか
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ただ、加工の工程などを考えるのは、マシニングセンタではなく僕たち。そういう意味では知識や技術、そして経験がないと、どんなに多機能な機械を導入しても優れた製品は作れないんです
なるほど、機械が削ってくれるにしても、「どの順番で削っていくのか」や「どの程度まで削るのか」という判断は、竹内さんの腕にかかっているということ。ハイテクな機械を駆使して製品を仕上げる。それが21世紀型の「職人」なんだなぁ。
材料販売も行っていることが、仕事の上での強みに
今見せてもらったのが本社工場ですよね。他の工場はどんな感じなんですか?
「いいですよ、じゃあ行きましょう」ということで、竹内さんに案内してもらったのがこちら!
本社工場から歩いて3分もかからない場所にある第二工場。外観はさらにオシャレ! 本社工場よりも大型の機械加工を行っているそうです。
これが社内で最も大きな製品を加工できるマシニングセンタ。僕も余裕で入れるから、加工してアップデートしてもらいたい。それはともかく、この建物の正式名称はテクニカルセンタというそうですが、それは2階に検査部門が入っているからだとか。そちらもちょっと覗いてみましょう。
ここでは仕上げた製品が規定通りに出来上がっているのかどうかを確認するそうです。たとえば5ミリのネジ穴であれば5ミリのネジを入れて確認するのはもちろん、少しだけ大きいサイズのネジが「きちんと入らないかどうか」も確認するのだとか。厳密なんですねぇ。さすがメイド・イン・ジャパン!
「じゃあコンドーさんにも検査をやってもらいましょうか」
えっ、マジですか? そう言って竹内さんが渡してくれたのは、1/100ミリ単位まで測ることのできる「デジタルスライディングゲージ」と呼ばれる計測器。すごいなぁ。っていうか、竹内さん、機械加工だけでなく製品検査についてもかなり詳しいですね。
「実は僕、最初から加工課で働いていたわけじゃなくて、入社直後は材料部門、その後にこの検査部門に所属していたんです。加工課で働き始める前に、その前後の過程をきちんと理解したことが、今の仕事にも役立っているような気がします」
続いてもう一つの工場、第三工場も見学させてもらいました。
第三工場は、最近、建物を買い取って工場にしたそうで、やはり本社の近くにあります。第三工場には加工に使用する材料のストックと、それを切り出すための機械や細かな部品を作るための機械が設置されています。
マテリアルの沿革をたどると、もともとは機械加工に使用する材料の販売からスタートしました。そして、自社で加工を行った方が利益も上がることから、機械加工も行うようになったといいます。そして現在も、材料販売と機械加工、両方のビジネスを展開しているそうです。
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両方のビジネスを手がけていることの強みって、何かあるんですか?
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やはり材料を確保できている分、お客さんからのオーダーにも迅速に応えられますよね
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確かにどんなビジネスでもスピードは大切ですよね
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それに試作品を作ってくれという場合でも、材料が揃っているほうが製作期間にも余裕ができますから
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なるほど。いろんなメリットがあることがよく分かりました
資格を持っていなくても飛び込めるのが、製造業のいいところ!
他にも会社の強みはありますかと聞いたところ、竹内さんから「できません、って言わないことですかね」と返ってきました。それってなかなかできないことですよね。
「もちろん、明らかに無理な注文に応えることはできませんが、納期的にも技術的にも可能性があれば挑戦します」と、竹内さんは力強く応えてくれました。
社内の他のメンバーにも相談し、アイデアを募ることも多いのだとか。そうやっていろいろなアイデアを教えてもらったことで竹内さんの「引き出し」も増えていくことに。そして他社で断られた依頼にも応えていった結果、「マテリアルなら何とかしてくれる」という信頼をお客さんから得たそうです。
「あと、対外的な強みではないけど、残業がないのもウチの会社の良さだと思いますね。毎月数時間しか残業することがないし、土日もしっかり休めるんですよ。意外でしょ?」
確かに夜遅くまで機械に向かっているイメージを、勝手に持っていました。今日一日で、大田区の町工場に対するイメージがガラッと変わってしまいそうです。これはぜひ、社長にも話を伺わなければ!
というワケで、細貝淳一社長の登場です。
どこかでお顔を見かけたことがあると思ったら、下町ボブスレープロジェクトでGMを務めておられたんですね。細貝社長によると、残業時間の削減に関しては、今後更に徹底させていきたいとのこと。さらに有給休暇の消化率や給与体系についても、より社員が満足のいく方向に高めていきたいそうです。
「それと、社員の技術向上にも力を入れています。社外の講習会も申請をしてもらえれば行けるようにしているし、資格取得のサポートもしていますよ」
現在、マテリアルには国家資格である機械加工技能士1級を取得した社員が9名在籍。もちろん竹内さんも1級取得者です。
「高いレベルの資格を有している人材は、どこの会社でも欲しいし、資格があれば条件のいい会社への転職だって可能です。彼らにはそんな優れた人材になってもらい、私自身は彼らがずっと働きたいと思える環境を整える。そんな、刺激をし合える関係がいいのではないかと思っています」
なるほど、それなら社員もやる気になりますよね。
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機械加工技能士1級を持っているからこそできる仕事ってあるんですか?
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特に仕事が限定されるわけではないんです。たとえば住宅を設計しようとすると、まず1級建築士の資格を取らないといけないですよね。機械加工技能士はそうではなくて、仕事を通して身につけた技術を、国が認定してくれるんです
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なるほど〜。建築士資格とは逆なんですね
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そうなんです。だから製造業って、資格を持っていなくても仕事を始められるんです
じゃあ竹内さんもいつかはマテリアルよりも条件のいい会社に?
気になって本人に聞いてみると、「いや、僕はずっとここで働きたいですね。細貝社長には、ハタチそこそこの若い頃から面倒を見てもらっているし、何よりここでの仕事が面白いから」と、力強い答えが返ってきました。
加工課に異動して機械加工を始めたその日から、ずっと変わらず仕事が楽しいと語る竹内さん。難しい加工を仕上げると、社員同士で自慢し合ったりもするそうです。何だか楽しそう!
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今後もずっとマテリアルでお仕事を続けるとして、何か目標はありますか?
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何か大きな仕事を手がけたいだとか、微細加工をしたいといったことよりも、個人的には従来の加工方法からの脱却を目指したいですね
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ん? それはどういうコト?
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日々金属を加工しているわけですが、もっと効率が良かったり、ミスが少ない加工方法があるんじゃないかと常に考えています。そのためにさまざまな情報を集めたり、自分なりに加工方法の改良に取り組んでいるんですよ
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会社のことが、何より機械加工という仕事が大好きなんですね
お話を伺った竹内さんはとても仕事に前向きで楽しそうだし、会社は想像以上にハイテクだし。何だか従来の町工場のイメージがこのマテリアルから、そして大田区から変わっていくんじゃないか。今回の取材を通してそんなことを実感しました。何より、安心して働くことのできる環境整備に力を入れている点が印象的でした。
株式会社マテリアルの
- 今以上に、世界を舞台にビジネスを展開させていきたいと考えています。そのために不可欠になるのが大手企業との連携。そうやって事業を拡大させると同時に、ホールディングス化することで多くの会社を立ち上げたい。そして現在社内で頑張っている社員たちに、立ち上げた事業を任せたいと思っています。
- 10年後を迎えるまでに、現在の事業を拡大していくのか、それとも新規事業を立ち上げるのかといった、会社としてのターニングポイントを迎えていると思います。その上でホールディングス化で生まれたネットワークや、社外との連携を生かして、ビジネスを展開していきたいと考えています。