最新鋭機器を毎年導入!高い精度の加工技術で新しい分野を切り拓く

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70年の歴史とメーカーの太いパイプを武器に成長

こんにちは! 『おおたシゴト未来図』レポーターのコンドーです。今日は東急多摩川線「武蔵新田駅」から徒歩2分のところにやってきました。目的地はここ「株式会社三陽機械製作所」です。

株式会社三陽機械製作所本社

案内してくれるのは、入社5年目の野川聡さん。「入り口で僕と一緒にポーズしてください」とお願いしたら、ノリノリで応えてくれました。サービス精神旺盛っすね。

三陽機械製作所の入り口でポーズ
野川 聡(のがわ あきら)さん
マシニングセンタ主任。地元山形で、トータル8年ほど製造業の仕事に携わる。いくつかの会社を経て、旋盤やマシニングセンタの技術を習得後、30歳というタイミングで上京。三陽機械製作所に入社後、同時5軸加工機ならではの複雑な加工技術を磨き、仕事の幅を広げている。現在は、マシニング部門の責任者として活躍中。

ところで、三陽機械製作所は何を作っている会社なんでしょう?

「弊社が得意なのは、精度が高くて複雑な金属加工です」と言いながら、野川さんが見せてくれたのが、これ。三陽機械製作所の主力商品だそうですが、むむむ? 何に使うもの?

コンプレッサー

これは、工場の製造ラインや建設現場などに欠かせないコンプレッサーの主要部品だとか。コンプレッサーとは空気を圧縮して送る機械のことで、その「吸い込み絞り弁」という大事な部品なのだそうです。これを各パーツの加工から組立まで行っています。

コンプレッサーの説明
説明を聞いて驚くコンドー

この真ん中の軸が動く仕組みなんですね? わっ、びっくりした。すっごく滑らかに動くんですね!!

でしょ?(笑)海外の製品だとこうはいかないんですよ。

へぇ~、さすが、日本のものづくり! それだけ加工も大変なんですよね。

吸い込む空気量を調整する大事な部分なので、とても高い精度が求められるんです。

技術のことを話すときの、野川さんのごきげんな顔!
思わずドヤ顔になるほどの自慢の加工技術は、1948年の創業以来、試行錯誤しながら培ってきたもの。その歴史の長さと、創業当時から続く大手電機メーカーとの太いパイプが三陽機械製作所の強みだと言います。そのメインクライアントが北米市場へ進出を図ることになり、主要部品を担う三陽機械製作所の事業にも「追い風が吹いている」とのことです。

コンプレッサーの組み立ての説明を聞くコンドー

大事に育ててきたコンプレッサー部品という大きな柱。しかしそれに満足することなく、どんどん別の分野にも参入を図っています。

その一つが、転落防止用のホームドア部品の製作。すでに地下鉄や私鉄、いろいろな路線で使われているそうです。さらに、 航空機部品にも参入しようと準備を着々と進めているところ。そのために昨年、国際規格のJISQ 9100認証も取得済みだとか。

「どこからそんな話、見つけてくるんですかって社員があきれるくらい、うちの社長はいろいろな業界に首を突っ込んで営業活動してくる(笑)」と笑う野川さん。社員もそれを楽しんでいるようですね。日本の製造業として注目を浴びる大田区だからこそ、いろいろな業界の情報が入ってくる。そんなメリットも活かしながらのチャレンジなのだと話してくれました。

同時5軸加工機も! 最新鋭の機械を導入することで進化し続ける

三陽機械製作所では毎年1台ずつ、新しい加工機械を導入しているそうです。ものづくりの世界で先頭を走り続けるため、常に設備投資は必要というのが会社の考え方なのだとか。毎年1台って簡単なことじゃないですよね。ものづくりの心意気を感じます。

では、さっそくその自慢の機械を見せてもらいましょう!

最新の5軸加工機

最初に見せてくれたのが、野川さんが担当しているマシニングセンタという機械。遠くから見ると、ただの白い箱なんですが、やっていることはすごい。平面や側面の切削やら、穴開けやら中ぐりやら、まあ、とにかくいろんな加工を1台でやってくれるそうです。そんなことができるのは、プログラムに従って、機械が自動的に工具を交換しながら加工していくから。器用な機械だなあ!

しかもこの機械は、X軸、Y軸、Z軸に回転する2軸を加えた5軸制御が可能な最新鋭。5軸って言われても、想像するだけで頭の中がぐるぐる回っちゃうけど、要は、複数の面に加工ができ、しかもこれまでの機械よりも複雑な加工もできちゃうらしい。ちなみにこの機械で、主にホームドアの部品を作っているんだって。

5軸加工機にプログラムを入力

両開きのホームドアの部品は、鏡に映したように対称。だからプログラムも対称に作らないといけない。そのとき刃が走る方向、削る方向も考えないと精度に影響するんです。

どんなにすごい機械でも、結局それを活かすのはプログラミングなんですね。

プログラムは手間暇をかけないと、いいものは作れない。一方で、プログラムを作る時間をいかに短縮するかも大事なんです。

加工する時に注意していることはどんなことですか?

五感を大事にすること。音を聞いたり、見たり、触ったりしながら、もう少し回転数を上げられるとか、ちょっとバリバリいってるなとかを確認しながら加工しています。

24時間稼働可能なマシニングセンタの説明

こちらも5軸のマシニングセンタ。24時間動かしながら、コンプレッサーの部品を作っているそうです。同時に違う加工もできる機械なので、特徴を最大限に活かせれば、加工の効率化や時間短縮ができるそうです。

旋盤加工機
旋盤加工中

他のフロアには単品加工にも対応する旋盤加工機もあれば、24時間自動で動く旋盤機もありました。こんなにたくさんの機械、どう使い分けるんだろう。

「作るものによって適する機械も違う。新しい図面が来ると、まずどの機械を使って加工するのがベストかを考える。旋盤から始めるか、マシニングセンタから始めるか、旋盤のリーダーと検討するところから始まります。さらに組み立て工程も考えて、スケジュールを立てていきます」

提示された材料と図面を元に、どうアプローチしていくか。機械の選択、切り出す順番など、無限のバリエーションがある。そこがおもしろさなんだろうと感じました。

下町ボブスレーの製作にも参加。極めた技で世界にアピールする!

実は野川さんは山形県出身。わざわざ上京して、三陽機械製作所に入社したきっかけは「機械設備」だったそうです。

野川 聡さんインタビューショット

野川さんは上京前にも製造業に従事。習得するのに、旋盤は2~3年、マシニングセンタは5年と言われているところを人一倍努力し、「旋盤だったら半年くらいで次のステップへという感じでやってきた」そうです。そして次に考えたステップが「東京で揉まれてこよう」でした。

まず興味を持ったのが『ものづくりの大田区』。そこから企業を探していたときに、三陽機械製作所のHPを見つけました。野川さんの目を惹きつけたのが、最新の加工機。「こんな機械を導入している会社がある」と驚き、「見てみたい、使ってみたい」と思ったそうです。

「自分は、極めるためにここに来たんです」とキッパリ語る野川さん。カッコイイ! 僕もそんなセリフ、言ってみたい。

5軸加工機の先端に付いている刃物の状態をチェック

現在は、憧れの5軸加工機を使いこなし、複雑な加工を担当。なかには加工が難しい材質や、初めて削る材料も。それを自分で工夫しながら、図面通りに加工できたときが楽しい瞬間だと言います。でも、注文通りに仕上げることが、めざすゴールではありません。短納期で低コスト、しかも高品質というお客様が最も求めることに対応する加工。それが、野川さんにとっての“極める”ということ。

刃物を確認中

高価な刃物を使えばより早く加工できるそうですが、その刃物の条件合わせを間違えると折れてしまいます。野川さんも失敗して落ち込んだことも。

「精度を上げるためには切削水の定期的な交換が大切なんですが、ちょっと怠ると油の汚れで刃の損傷につながります。忙しいから明日にしようと思ったことが、刃を傷つける元になったり。だから妥協できないんです」

ボブスレーに使う部品の説明

また、本業とは別のプロジェクトにも取り組んでいます。それが「下町ボブスレー ネットワークプロジェクト」。
冬季オリンピックでも注目競技のひとつ、ボブスレー。そのソリを三陽機械製作所をはじめ大田区の町工場が共同で開発、製作しているんです。野川さんも同時5軸加工機を駆使し、他社が作れない高難度の加工部分を担当しています。

夢があるプロジェクトですよね! ソリのどの部分を作っているんですか?

ボブスレーって、スタートする時に選手がバーを押して走り、乗り込んだら速やかに収納する。その収納部分を主に作っています。ふだん作っている精密機械はどんな重要な部品でもスポットを浴びることはない。作っている僕たちも、正直、どこに使われているだろうって感じ。でも「下町ボブスレー」は作っている僕らにもわかりやすいし、やっていて楽しいです。

苦労もありますよね?

もちろん。何度作り直したことか。全部で50点くらい作ったと思いますよ。夜中まで残業することもあります。

もう勘弁してよ~って思ったことはないですか?

ないです! 一番難しい加工を任されているプライドもあるし、たくさんの会社が参加し、みんなの思いが結集しているから、簡単に投げ出せません。だから一生懸命残業する(笑)。それにね、この下町ボブスレーは、大田区の町工場の技術を世界にアピールするモノなんです。わくわくしますよね。

野川 聡さん

野川さん自身の今の目標はなんでしょうか?

「マシニングを極めること。もう一つは、来年、山形に工場を建てるるので、その立ち上げを成功させること。24時間無人運転の設備も導入予定で、それに合わせた治具(加工に使う工具)製作に取り組もうとしています」

新工場の建設場所に山形を選んだ理由として、社長からは「真面目な県民性を買ったんだ」とよく言われるそうです。もちろん山形県民の野川さんの働きを評価してのことでしょう。「そう言ってもらえるとありがたいですよね」と野川さん。極めることをめざすプロフェッショナルっていう雰囲気、最後までかっこよかったです!

談笑する野川さんとコンドー

三陽機械製作所は、産業用の精密機器部品から、下町ボブスレーや航空機部品まで、いろいろなことにチャレンジしている会社でした。最新の機械と高い加工技術で、他社ができないことをやる! そんな誇りが伝わってきます。
実は、取材の翌日は社内のボーリング大会が予定されていました。普段から社長と社員が一緒に飲んだり食事に行く機会も多いとのこと。コミュニケーションとモチベーション、この2つを大事にしている会社なんだなあと感じました。

株式会社三陽機械製作所

未来図
3年後
「三陽機械製作所に任せれば、なんでもできる」という大田区を代表する製造会社をめざす。具体的には、工場が集積している大田区ならではのネットワークを活かし、その中で三陽機械製作所が窓口の役割を果たしていきたい。弊社でできない仕事は、仲間の会社を紹介したり、やってもらったりすることで、幅広い仕事を請け負う仕組みを作りたいと考えています。
10年後
海外から直接受注できる体制に。情報が集約しやすい大田区のメリットを活用して情報収集し、コンプレッサーはもちろん、それ以外の分野でも海外と直接取引ができるものがあれば、どんどん海外市場に進出していく。また、海外の展示会や、中国やタイなどのものづくりの現場を見たり、体感する機会を社員にも提供していきたい。
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