私は小売店や飲食店の経営者の方と会話をする機会が多い仕事をしています。
- (近くのライバル店以外に)「大田区内の同業で繁盛している店があるのを知らない」
- 「店が忙しくて他の店の様子は分からないし、見に行けない」
- 「自分は(○○職人として)修業で身につけたことをやるだけ。他の店のやり方は真似しない」
こうした声をお聞きすると、お考えやご事情はよく分かりますが、他の店の動向や情報に関心を持ち、自店運営の参考に取り入れていただきたいと感じています。
皆さまがお店を経営していると、色々な意見が耳に入るでしょう。お客さまの声に対してすべてに対応する訳にはいかないにせよ、ある程度聞く耳を持って、ニーズに応えていらっしゃると思います。お客さまとは別に、専門家や同業者などから経営へのアドバイスを受けることもあるでしょう。大田区産業振興協会もご相談があれば、アドバイスをする立場ではあります。
経営について各方面から意見を耳にしても、誰の意見を取り入れるか、どのような方針にするかはご自身の選択になります。
放っておいて欲しい、という気持ちの方もおられるかと存じます。すべての意見を聞き入れる必要はないですが、一人よがりになるのではなく、いくつかの意見を参考にして、方針を決定していくことも検討してみてください。
私は皆さまが正しく判断するためには、これまでの経験や実績の他に、情報収集がとても大切だと申し上げたいです。
お店でご商売に勤しんでいる方は、ご自身のお休みが限られがちなので、休日をしっかり確保することは肝要です。そのうえで、
なるべく時間の余裕をつくって街へ出向き、様々な店へ訪れ観察していただくことをお勧めしたいです。自店舗や経営の参考とするために、他の店の優れた点を見つけるよう心がけ、経営の判断材料としていただきたいのです。
他店を気軽に「観察」してみる
ライバル店の様子を知るために「競合店調査」という手法が実際に存在します。それも有効なのですが、顔見知りやご近所だったりすると、お互いなかなか偵察しにくいものです。見て模倣するだけでは成功につながらないケースもあります。ここで私が提案するのは、他の店へ調査研究に出向くことではありません。
これまでご自身が知らなかった店、有名ではないけれども何となく魅力を感じる店へ、買物やお食事などひとりの客として気楽に入って、そのついでに観察するのが有効です。これを提案したいのです。
自身のお店に参考になる情報は、遠く離れた街へ行った時や、まったく別の業種の店を利用した時に見つかることもあります。
先に目的の店を決めてもよいですが、街へ出向いてから入ってみたいお店を見つけるのもよいでしょう。自身のお店と関係ないように最初は感じても、案外共通点があるかもしれません。
様々な視点で魅力を探し、参考にする
小売店ならば商品を選んで代金の支払いを終えた時、飲食店ならば食事の提供を受けた時、たとえば親近感、高級感、値ごろ感、清潔感、ワクワク感など、何か感じるものはありませんか?
ハード面にも注目してみてください。広さ、外装、立地などはご自身のお店と比較していかがでしょうか?
▷小売店の場合: 商品の陳列・表示・説明、店内の雰囲気・内装・動線、接客、レジなど
▷飲食店の場合: 客席、メニューの表示、接客対応、提供までの時間、店内の雰囲気・内装、レジなど
訪問した店のSNSやホームページを確認するのも大切です。
普段お店を経営している方々には経験の蓄積があるので、他の店を見て評価するだけのセンスが備わっていると思います。利用した店ごとに「自分のお店だったら、ここはこうしたいな」と、すぐにピンと気づくことや感じることがあるのではないでしょうか。
利用した店の優れた点や特徴はその店の強みです。他の店の強みを探し「これはとても良い特徴だから、自分もやってみよう」とご自身のお店でも取り入れてみたらいかがでしょうか。
もちろん、ただ真似るのではなく、ご自身のお店の事情に合わせてアレンジする必要はあります。
時には別の業種の経営者や他の地域の店などと、積極的に交流してみるのもよいと思います。
こういう声を聞くと、もう少し前向きに、プラス思考になってほしいなと思います。他の業種や地域で当たり前になっていることが、自分やその周りではできていないと感じる場合があり得ます。
他店の良い所を学びながら自店舗の課題に取り組み、業績向上や成功につなげていただきたいと思っています。