新規顧客の獲得について考える

あきない活性化コーディネーター
宮川説夫
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去る7月1日付で「常連客の大切さ」というコラムを配信した商い活性化コーディネーターの宮川です。そこで常連客が店舗経営の安定には絶対に必要であることを説明致しました。しかしながら常連客も最初の来訪は新規顧客であったわけですし、引越や生活環境の変化でいつまでも固定客として来訪してくれるわけではありません。常連客の確保と共に、常に新規顧客の獲得にも努力しなければ店舗の繁盛が続かないことは読者の皆様も理解されている通りです。従って今回のこのコラムでは新規顧客の獲得について考えたいと思います。

新規顧客を獲得するためには、新規顧客が皆様の店舗に来訪するまでの道筋を考えることが第一となります。これをカスタマージャーニーといいます。和訳すれば顧客の旅路とでもいうのでしょうが、結局のところ、新規顧客が皆様の店舗に来訪するまでの心理的な道筋を明らかにするということに他なりません。

カスタマージャーニーは、まずは皆様の事業や店舗の認知から始まります。皆様の店舗を知らない状況から、例えば駅に行く途中に何か新しいお店が出来たという気づきや、友人が高評価して話していた店はあそこにあったのか、という認知の行動から始まります。 従って新規顧客を獲得するには潜在顧客に皆様のお店を認知してもらうことから始まります。

プロモーションはこの「認知」をしてもらうための行動になります。本コラムを読んでいただいている多くの事業者の皆様はだいたい半径3キロ以内の商圏を対象とした地域に密着した商売をされている方が多いと思いますが、そうした事業に効果的な認知拡大策があると考えています。

ここで効果的な方法は、一つには固定客の方に協力してもらい、口コミで広げる仕組みを打つことです。 例えば、固定客の方にグループやパーティでの利用を皆様の店舗で実施してもらい、一緒になる新規の方々に店舗の存在を知ってもらう方法があります。インターネットの店舗紹介では想定もしていない悪い口コミを書かれてしまう恐れもありますので、リアルな来訪客に精一杯のサービスを提供して、その来訪者の口コミに期待するのが良いでしょう。

もし新規開店したばかりの店舗であれば、固定客の獲得はこれからの仕事となりますが、地域内に住む知人や友人に来店してもらったり、最寄り駅や店舗前で新規開店を知らせるビラを配ったりするのも認知をしてもらう有効な方法です。 またインターネット検索エンジンの検索結果のトップに来るようにSEO対策に力を入れる方法もあります。

認知が済んだ顧客の次の旅路は、店舗への来訪となります。この認知から来訪へのステップアップをコンバージョンといいます。コンバージョンレートという比率もあり、これは野球でいう打率のような感じです。認知数が打席数で、来訪数が安打数となります。このコンバージョンレートを上げることが経営者の腕の見せ所となります。

来訪とは顧客による店舗の選択に他なりません。 つまり、店舗を選んでもらうためには、顧客への動機付けがカギとなります。口コミの他の手法を考えると、店舗決定を促すクーポンを付けたビラの配布を店舗がある地域で実施したり、店舗の前にメニューや商品サンプルを展示したり、他店舗との差別化になるいわば店舗の得意技をキャッチコピーにして単純明快に示す等の方法で、認知した顧客による店舗選択の動機付けとなる情報を提供することが肝要となります。

ここで皆様には、

店舗の認知を促す活動と、店舗への来訪を促して実際の集客となる活動は、異なる目的の活動であることを理解していただければと思います。そして店舗への来訪が実現した後にも、顧客の常連客化を促すプロセスが待っています。



従って、それ以降も顧客との付き合いを考える必要があります。顧客の旅路と店舗の関係がどのような状態なっているかを良く見極めて、顧客との付き合い方を考えてみては如何でしょうか。

あきない活性化コーディネーター 宮川説夫

1960年千葉県市川市出身。海城高校を経て上智大学経済学部を卒業した後、1984年4月に伊藤忠商事㈱に入社し、主に事業審査部署を歴任しました。その間にオーストラリア駐在経験があります。2018年6月に伊藤忠の事業会社であるジャパンフーズ㈱の常勤監査役を就任した後、2023年10月から、急速冷凍機製造販売のベンチャーであるデイブレイク㈱の常勤監査役に就任して現在に至ります。2019年から連続して東洋大学と明治大学の経営学大学院で学び、経営学修士(MBA)を取得しています。2021年から中小企業診断士活動を開始して、主に小売業・卸売業や製造業等に支援活動を行っております。マーケティング、生産管理、財務会計、内部管理体制の構築に強みを持っております。