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- > 人の手に代わるROVの開発を通じて、社会課題の解決に
水資源が豊かな日本は、広大な海を利用し、海上交通の活用、海洋空間の利用、海底資源の開発等が行われてきました。一方で、大自然の海はまだまだ謎に満ちあふれています。そのような中、水中(特に海洋)の「はかりたい」という要望に応えるため、大田区の羽田に拠点を置き、ROV(RemotelyOperatedVehicle:遠隔操作型無人潜水機)の開発に取り組む、株式会社水龍堂の代表取締役である佐藤氏にお話を伺いました。
大学を卒業後、計測機器の専門商社に入社し、事業の一部分である海洋調査機器の営業部に配属されました。入社したのが2011年の東日本大震災が起きた年であったため、被災地でガレキ調査などの測量支援や、現地の研究者と調査を行っていました。ROVとは人間がリアルタイムに操作する有線型のロボットで、とりわけこの中で小型なものは水中ドローンと呼ばれます。これらは海や川といった水中の撮影や、計測・測量に使用されます。
現場で作業を進める中で、潜水士の方の事故事例が少なくないことを知りました。そこから、人が行っている作業を機械で代用できないかと考えるようになりました。
また、使用する機器のほとんどが海外製であり、国産の製品が非常に少ないと気づきました。現場で様々な分野の方と話しをする中で、海外製の機器は使い勝手が悪いこと・故障した際のデメリットが大きいことが課題であると感じました。その経験から、自分で製品を開発したいとの思いが強くなり、2022年3月に起業する運びとなりました。
メイン事業として取り組んでいるのは、ROVの開発・製造・販売です。その他にも、海洋調査やそれに関わるコンサル事業を営んでおり、取引の拡大につなげたい方への助言も行っております。
―貴社が開発した「汎用ROV(水中ドローン)龍頭」は新製品・新技術コンクールの奨励賞を受賞しました。こちらについて教えてください。従来の水中計測や作業では、水中の濁りや暗闇などで十分な視野を確保することができず困難を極めていました。本製品では、ROVにユーザの用途に応じたセンサを組み込むことにより、水中の可視化を実現することができます。これによりダムや港、河川などの水中インフラの点検を効率的に実施することが可能です。特に、国内の海洋で作業される方の要望に応じて、カスタマイズできることが強みです。
―なぜ立地場所に、大田区を選ばれたのですか。候補地としては、前職の計測機器の専門商社に隣接する神田周辺か、一般財団法人 日本水路協会が近くにあり、全国の顧客が出張の宿泊先として選ぶ蒲田でした。検討を進める中で、試験用の水槽の配置や作業場の確保など製造業として馴染みやすいことから大田区での創業を選びました。
セミナー会場として大田区産業プラザPiOやPiOPARKを安価に利用できることや夜の親睦会も蒲田で開催しやすいこともとても気に入っています。
特にセミナー会場として清潔感があり、サポート・使い勝手については、他の施設に比べて断トツに良いですね(会議室の空き状況を、常にチェックしています)。
入賞後、Meet New Solution in OTA内での表彰式・出展者プレゼンテーションをきっかけに、資金調達に成功することができました。また、4月には、東京ビッグサイトでの展示会、「Offshore & Port Tech 2024」にて、自社のPRを行うことができ、大田区産業振興協会にはとても感謝しております。
また、新製品・新技術開発支援事業については、金額が最大500万円と交付額が高いことに加えて、使用できる項目の幅が広いことにより、製品開発が進み、大変助かりました。具体的には開発に伴う人件費や実証実験の費用、トライアル助成では交通費も対象になることも大きいですね。
加えて、ユナイト助成では、スタートアップ企業が大田区企業への発注を条件に、「区外の企業」も活用できるのはとても素晴らしいと思います。また、区内の企業については、今年度から金額が上がっており、非常にありがたいと感じました。
設立した当初からAUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)を開発することと、そのロボットを運ぶことのできる船を開発することが最終目標です。そのことにより、海洋の現場で測量・計測している方々が安全に仕事を行うことのできる環境に整えていきたいです。実際に現場での事故で亡くなる方や、後遺症などで復帰できない方もいらっしゃいます。潜水士の補助のみならず、人が作業するには危険な場所での水中作業を担う水中ロボットの開発を通じて、将来的にそのような社会課題を解決したいと考えております。
―ありがとうございました。
株式会社水龍堂
設立:2022年3月
住所:東京都大田区羽田一丁目19番17号 大芳マンション1F
ウェブサイト:https://suiryudo.com/
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