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- > 受・発注あっせん相談サービス 「大田区の技が光る 最終製品への取り組み」
ものづくりのまち大田区には優れた技術を持つ中小企業が集積しており、(公財)大田区産業振興協会(以下「協会」)では加工・製造の外注先をお探しの皆様へ、確かな技術を持った大田区企業を無料で紹介するサービスを展開し、毎年1000件近くの相談が寄せられています。
かつては大田区の町工場が得意としてきた旋盤など単加工の依頼が多くを占めていたが、最近ではその領域に留まらず設計・デザインから担当し最終製品を作り上げる案件が多数を占めています。
本号では大田区企業が携わる最終製品の事例を紹介します。
企業名:アイオス株式会社
アイオス(杉並区永福)は生活用品の開発を手掛けるファブレス企業。代表である石井宏和氏は以前出会った非常に薄くて軽いグラスに感動した経験をもとに「ガラスではなく金属であれば薄くて軽く、さらに割れにくいタンブラーができるのではないか」と考え、純チタン製タンブラーの開発を構想した。しかしチタンは非常に加工が困難な金属で、成形や研磨に高い技術が求められるため、製品開発を請け負ってくれる企業紹介を協会に相談した。
石井氏は「量産品ではない職人技という付加価値のある製品にしたい」と考え、へら絞りによって成形することに決めた。そこで、協会の受・発注あっせん相談サービスを活用し、コーディネーターから条件に合う企業の紹介を受け、プロジェクトがスタートした。石井氏は「特に苦労したのは研磨工程です」と語る。表面の仕上がりと強度の両立、さらに付着物の洗浄という、いくつもの課題を抱え開発は難航した。
試行錯誤を繰り返す中で、連携先である成形加工を請け負う高桑製作所(南蒲田)や研磨加工のメイホー(東糀谷)は、自社が請け負った加工だけでなく完成イメージを共有し前後の加工技術の相談にも耳を傾け、試作加工先を紹介してくれた。いわゆる大田区に古くから存在する「仲間まわし」ネットワークである。後日談として高桑製作所・高桑社長に伺うと「業者が変わるとちょっとしたノウハウも変わり、それが出来上がりに大きく影響することを自社も経験していたので、知っている会社を紹介しました」と語ってくれた。
石井氏は、試作品が出来上がるたびに気付いた点を書き出し、何度も協会のコーディネーターへ相談に訪れ、新たな企業紹介を受け試作を重ねた。あらゆる研磨を試した結果、複数の研磨工程を重ねることで色味や感触、飲み心地を含めて最高の仕上がりとなった。前述した2社の他、大森電解研磨工業(大森西)、日本エッチング(本羽田)と連携し、大田区の職人技による細部までこだわったタンブラーが完成した。
「協会のコーディネーターには素晴らしい企業を紹介していただき感謝しています。今回のプロジェクトを通じて町工場の方々とともに製品開発の楽しさ、難しさ、喜びを実感することができました。今後、自社の技術を活かしたB to C製品に挑戦したいという町工場の方々のお力になりたいと考えています。コンセプトづくり、製品デザインの他、ロゴデザインなどグラフィックデザインも含めてお役に立てると思います。是非お声がけください」と石井氏は締め括った。
企業名:株式会社瀧口製作所
業務用照明機器のDNライティング(神奈川県平塚市)は、紫外線除菌装置のラインナップを増やすため、小ロットで生産対応が可能な企業を紹介してもらうことを目的に、協会の受・発注あっせん相談サービスを利用した。自社開発した試作品は、小ロットの場合、高コストで商品化が難しかったが、「大田区のプロに相談してコストと品質のバランスが取れた製品を作りたい」との依頼に対応したのが瀧口製作所(大田区蒲田)。板金加工を中心に設計・開発からアフターフォローまで一貫して対応、顧客の求める機能やコスト等に対して提案できる「攻めのOEMカンパニー」を掲げる会社である。
瀧口製作所は、大量生産ではなく適正ロットでのコストダウンを模索。一方で市橋取締役は「より魅力ある製品とするため、高級感を求める店舗の内外装品や自動車等で使われる特殊なステンレス材を提案しました」と語る。この素材は塗装やめっきと違って剥がれる心配がなく、金属感を残したまま鮮やかな発色ができる。ただし曲げるときに発生してしまう折キズが目立ちやすく、溶接すると酸化被膜が熱により色抜けしてしまうのが難点だが、同社では最適な加工方法を模索し美しい仕上がりを実現した。
さらに同社は、自ら設計したモックアップを用いてデザインについて逆提案を行い、よりデザインがブラッシュアップされた新型モデルの開発も進めている。
DNライティングは「板金加工に関することだけでなく、瀧口製作所さんには他業種の参考情報なども提供していただき期待以上の効果が得られました」という。瀧口製作所の市橋取締役は「自社だけでは受けきれない仕事も増えてきました。今後は、設計開発は自社が担当し、製造工程はそれぞれ得意とする協力会社にアレンジするビジネスモデルを構築する必要を感じています。大田区内の企業の力を生かして共同でものづくりを行い、大田区に貢献したい」と意気込みを語った。
当協会では区内外より年間1000件ほどのお引合いを受け、区内のサプライヤー候補をご紹介し、多くの成約案件が生まれています。サプライヤー候補は、技術力や保有設備などのデータベースより抽出するため、企業情報が当協会に登録されていることが紹介の前提となります。ご登録方法等をご説明いたしますので、お問い合わせください。
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