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- > 中小製造業におけるIoTの有効活用について
2017年03月29日 公開
日本政府は、2015年に「ロボット革命イニシアティブ協議会」を設置。その中のワーキンググループ(以下WG)の1つとして、「IoTによる製造ビジネス変革WG」を設け取組みをスタートさせた。
2016年1月に公表された同WGの中間取りまとめでは、「中堅・中小製造業がIoTを活用するための基礎インフラの整備」が今後の検討課題の項目の1つとして挙げられた。
同年10月、「中堅・中小製造業向けのIoTを活用した先進取組事例」を公募、2017年2月、日本全国の中堅・中小製造業から40事例が集まりその内容を公開した。
「生産性向上や利益体質の強化」、「受注・外注・進捗管理の工程改善及び見える化」等、応募各社がIoTを活用し現場の改善に繋げる事例が多く見られ、各社、コスト面を意識した中小製造業ならではの工夫の跡がうかがえる。
これは、大田区中小製造業の強みである「仲間まわし」に「IT/IoT」を取り入れることで、中小製造業間をつなぐ新たなネットワークを構築し、製品の受注から納品まで一貫した工程管理を可能とする取り組みである。
これが可能になると、発注者からすれば、大田区中小製造業全体があたかもひとつの工場のように見えるため、どの工場へ発注すべきか迷うことがなくなり、効率化が図れる。また受注者からすれば、IoT活用によって得られる生産工程のレベルアップは、企業としての価値を高める効果にもつながり、更なる受注増につながることとなる。
受注者、発注者ともにメリットのあるこの構想を、区は「下町IoTファクトリー」構想として掲げ、大田区中小製造業協力の下、実現を目指した取り組みを進めている。想定する主な効果は次の3点である。
- 情報共有・業務連携を迅速化し生産性向上
- トレーサビリティ強化と仕事の質向上で信頼度向上
- 技術力・生産性・信頼度向上により新規顧客開拓、新たな受注獲得
「下町IoTファクトリー」の実現は、参画工場のコスト負担の軽減やネットワークの構築だけでなく、大田区中小製造業の新たなビジネスモデルの創造にもつながっていく。
同社は、一般板ガラス・鏡の加工卸、内装工事を主業務とされ、西尾社長は業界の動向をはじめ先見性が高く、自社におけるIoTの有効活用について、日々、模索・検証されている。「仕事を通じてIoTの造詣が深い方と知り合い色々と話をうかがったが、中小製造業の方々はIoTについて誤解をされているのでは?(西尾社長)」と言われる。
中小製造業から想像されるIoTと言うと、M2Mや生産管理システムの拡張等が考えられるが、西尾社長の考えは一線を画している。「当社のクライアントは、マンション販売のディベロッパーや百貨店等、いわゆるBtoC企業が多く、近年、ショーケースの完成品や一般消費者向けの鏡に力を入れている。クライアントの顧客毎に、地域性、年代、年収等の属性から多種多様な仕様やニーズがあり、これからのものづくりはクライアント側が提示する図面とおりに精度の高い製品をつくりあげることではなく、消費者のニーズに適した付加価値の高い製品を提供していくことが重要と感じている。その上で、様々な消費者の情報を収集するためにIoTを活用することを検討している(西尾社長)。」と言われる。
「今後は、中小製造業も顧客を意識したサービス業的な要素が必要。最適なサービスや付加価値を提供していくためには情報(収集)が一番重要で、IoTを活用することが有効な手段になると考えている(西尾社長)。」
IoTを活用して得られる情報やビッグデータを自社のモノづくりに融合させる。そこに中小企業やモノづくり企業が活躍できる新たなビジネスチャンスがある。これこそが、中小製造業において新たなビジネスモデルになるのではないか。中小製造業にIoTという追い風が吹いている。