- > 事業紹介
- > ひと味違う新しい助成金のカタチ ユナイト助成事業とは スタートアップ企業と大田区企業を結びつけます
2022年07月15日 公開
本事業は、スタートアップ企業による付加価値の高い案件を大田区内に呼び込み、区内企業の受注増加、販路拡大、そして技術力の向上を図ることを目的としています。
革新的なビジネスモデルの構築を目指すスタートアップ企業が、試作開発の発注を大田区内企業に対して行う場合に助成金を交付するため、交付対象はスタートアップ企業となります。
今回、本助成事業を活用した2件の事例をご紹介します。
事例1:コーディネーターによる伴走支援型マッチング
株式会社OUTSENSE(以下「OUTSENSE」)は、『折り工学』を用いて、宇宙で人が恒久的に暮らすことができる居住空間を作りたいとの思いから2018年に設立しました。宇宙空間においては、すでに太陽光パネルの展開収納実験などが成功したように、折りの技術はメジャーとなっています。
「宇宙産業は目覚ましい発展を遂げており、居住施設の建設も視野に入ってきている昨今、その分野における受託企業となるためには、地上において折り工学を用いた自社製品の開発、市場導入実績を積む必要が急務と考えています。今回は、営業案件の優先ではなく、市場性のある製品開発に注力するため、折り工学を用いて材料削減による環境負荷の軽減と製品軽量化を可能にした金属折板屋根を開発し、SDGs志向の新たな価値を創出しようとこの助成事業を活用しました」(石松氏)。
開発に向けて
協会のコーディネーターは石松氏より相談を受け、区内企業の中から要件に合う企業を探し、5社とのアポイントをセッティング、すべての企業に同行訪問しました。
訪問後、2社への試作品製作の依頼を決め、申請書を提出。「申請してから2週間弱での交付決定には驚きました」(石松氏)。この審査決定の速さも、スタートアップ企業を対象にしたユナイト助成事業ならではの特徴です。また、助成金の交付だけではないコーディネーターによる伴走支援がスムーズに進んだ事例です。
「開発したプロダクトは、今後の折り工学を用いた製品開発の見本品となり、試作品製作に満足しています。また、今回マッチングしていただいた2社との出会いはビジネスを拡大していくうえで私たちの大きな財産になりました」(石松氏)。
試作品1
試作品2
試作品3
受注側企業の声
同社は、本型を使わずにシボリ形状を作り出す板金技術を持ち、小ロット品の低コスト化・試作品の超短納期を可能とする企業です。
・素晴らしいマッチング
今回、協会のマッチングに感心しました。わが社の機械設備、技術をよく理解したうえでのマッチングであったため、試作品製作までとんとん拍子に話が進みました。
・自分たちの技術で何ができる?
スタートアップ企業が展開する新しい世界で、自社の技術がどのように活かされるのか、それを知る機会になったと同時に、今後様々な分野に得意先の範囲を広げていきたいと考えるきっかけとなりました。昔ながらの汎用機械の方は自由度が高く、難しい加工にも対応しやすい。新しい機械と古い機械、持っている技術でどこまで何ができるのか、頭をひねりながら、挑戦することはとてもワクワクするものでした。
大橋製作所は、100年を超える歴史で得た経験と実績を持つ精密板金加工を得意とする企業です。
・双方にとって、winwin
設計者の石松さんと一緒に話し合いながら、それぞれの専門的知識や経験からアイディアを出し合い、私どもの得意とする技術を有効活用した製品を作り上げていきました。求められているものをより早く、そしてより低コストで作成することができました。通常の仕事では、図面だけのやり取りで、なかなか設計者との接点を持てないのが現状です。改めて、設計者の意図を汲むコミュニケーションの大切さを感じました。
・新しいものの作り方や考え方を得た
スタートアップ企業は、今までにない世界を持ち込んでくれます。既存にはない新しいことをやっていこうとする思いは魅力的ですし、多くの気づきを得られた結果、新しいものの作り方や考え方につながりました。日頃は、スタートアップ企業とはなかなか出会うことができません。今回の機会を経て、よりお付き合いしていきたいと切望するようになりました。このユナイト助成事業は大変ありがたいと思います。
事例2:区内企業によるスタートアップ企業支援
株式会社グーテンベルク(以下「グーテンベルク」)は、3Dプリンティング技術でものづくりの改革を掲げ、2021年2月に創業しました。「DfAM(付加製造のための設計)に適応するものづくりを広く世の中に広めることで、もっと面白いものを生み出せるようなる」という考えのもと、ボトルネックであった造形時間を大きく短縮した超高速高性能3Dプリンターの開発に取り組みました。
「市場にあるFFF/FDM方式の3Dプリンター製品の最大10倍速での動作が可能となり、企業の営業時間内、学校の授業内での造形など、時間的制約により使用が難しかった領域においても展開できることを目指しました」(李社長)。
区内企業の株式会社極東精機製作所(以下「極東精機製作所」)の全面サポートのもと、3Dプリンターの筐体部品のデザインから製作までを依頼し、わずか3か月あまりで開発することができました。
同社は、コストや生産体制といった事業化リスクに対して、区内企業の加工ネットワークを最大限駆使し、量産設計を実現していきました。
市場投入、量産に向けて
昨年10月、大田区産業プラザPiOにて市場投入に向けて単独展示会を開きました。大手メーカーをはじめ、設計事務所、大学や個人など様々なユーザーからの関心を集め、高い評価を得ました。
製品化の最終段階で鈴木社長から、『ユナイト助成事業』を紹介されました。「いよいよ市場投入という最後の詰めの段階で、この助成金はとてもありがたかったです」(李社長)。
本年3月に助成金交付が決定、4月より本生産、今年6月に市場投入に至ることができました。すでに上場企業からの受注もあり、さまざまなメディアにも取り上げられています。「今年度の目標として、100台の販売を目指しています」(李社長)。
超高速高性能3Dプリンター
3Dプリンターでの製作物①
3Dプリンターでの製作物②
受注側企業の声
創業70年を超える精密部品加工会社。特殊NC旋盤技術で難形状加工の対応が可能とする企業です。
・受注側企業からスタートアップ企業に声を掛けていく
グーテンベルクと仕事をすることで、新しい考えと触れ合うことができました。それは、私たちにとって既存の考え方の転換、技術力向上とブラッシュアップにつながる大きな成果となりました。今後も現状に安住せず、私たち受注側企業もこの助成事業をうまく活用し、スタートアップ企業に積極的に声をかけていきたいと思います。この取組みによって、大田区全体が活性化していくことを期待します。
https://www.pio-ota.jp/news/2022/05/unite.html