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- > 魅力ある中小製造業とは ~若手人材の確保に向けて~
2017年09月07日 公開
近年の好調な企業業績や国内の人手不足を背景に、日本における雇用情勢は求職側有利な状況が続いている。また、本年度の就職戦線は「空前の売り手市場」とも言われ、8月時点で来春卒業予定の大学生・大学院生の内定率(内々定を含む)は昨年を上回るハイペースとなっており、大手企業であっても優秀な学生を確保するために、趣向を凝らした囲い込み策に余念がない。
一方、企業規模的にも資本的にも劣る中小企業においては、新卒・中途に関わらず若手人材の確保は困難を極めている。このような状況下、求人に対する広告コストや労力を拡大せずとも、着実に若手人材を確保されている大田区企業が存在する。今回はその事例(秘密?)をリポートする。
プラスチック精密加工を主業とするシナノ産業株式会社(大田区矢口)は、社員数13名(男性8名、女性5名)の内、9名が20代から30代前半(平均年齢37歳)で、若手と女性の活躍が顕著な中小製造業である。同社の柳澤社長に、独自の若手人材確保策を伺った。
同社は、以前より協会主催の人材確保に繫がるイベントに多数参加され、また、近隣の高等学校のインターンシップも快く受け入れる等、若者と触れ合う機会を積極的に持とうとされている。
「特段、意識して求人活動をするわけでも、特別な人材確保策があるわけでもなく、気が付いたら若手従業員が増えていたね。」
と謙遜気味に柳澤社長は笑顔で話す。
同社の若者を引き付ける魅力とは一体何なのか?若手従業員2名に話を伺った。
「私は、自身も共に成長していける中小製造業で活躍してみたいと思っていました。弊社に決めた理由は、社長自ら面接に対応いただき、社長のチャレンジ精神や自分を欲してくれている事、また、社内の雰囲気の良さを感じた事です」(木村さん:女性 平成27年新卒入社 理系大学院卒)。
「私は弊社のホームページが決め手となりました。ホームページを閲覧したところ、自社の目的意識やページ遷移等がはっきりしており、このような企業であれば仕事の役割分担や流れ、社員の連携等、職場環境も整備されているのではと思い、求人慕集はされていなかったのですが、直接、社長にメールを送って求職しました」(旭さん:男性 平成29年中途入社 理系大学院卒)。
2名に入社後の同社の印象を伺ったところ、共に想像以上に同社の職場環境や雰囲気の良さを感じていると言われる。
「若い従業員が多いこともあり、働きやすい職場環境づくりは意識して行っているよ」(柳澤社長)。
時には厳しくも、若手従業員が働きやすく、個々の能力や技術・技能の習熟度を高められる職場環境を如何に整備していくか。同社では、ベテラン従業員には新人を迎え入れるためのセミナーを受講させる他、外部コーディネーターを招聘し全社員を対象にヒアリングを実施、職場の課題や問題点を洗い出した上で改善に取り組む等、若手人材を確保するために多大な広告コストや労力をかけるのではなく、あくまでも入社後の人材育成や職場環境づくりに重きをおいている。
現に、同社に訪問すると従業員誰もが親切丁寧で明るく、また、アットホームな雰囲気を感じる。これは、柳澤社長と専務(社長奥様)が中心となり従業員が働きやすい職場環境づくりを推進され、これが従業員にも伝わり自然に醸成されてきたものと思われる。
同社は、大田区が優れた工場を認定・表彰する「優工場」で平成20年度に認定企業となっている。認定基準のひとつである"人に優しい"という項目は、まさに従業員が働きやすい職場環境を指している。自社の成長や発展に貢献してくれる従業員に対して、"如何に働きやすい職場環境を提供できるか?"これが、これからの中小製造業の人材確保における大きなファクターとなるだろう。
2017.9.7
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