2017年10月02日 公開

ものづくりの拠点、大田区で創業 ~創業支援事業を活用して更なる飛躍を

大田区は、都内最大の工場数、商店街数を有する産業のまち。充実した交通網により、抜群のアクセスの良さを誇るビジネスを始めるのに適したまちである。 近年大田区の創業相談窓口への相談件数が増える傾向がある。大田区及び大田区産業振興協会(以下、協会)では、工業・商業ともに活気あふれる大田区の地で創業を検討する起業家へ創業しやすい環境と様々な支援制度を設けている。

大手企業でも航空機産業への新規参入が難しいといわれる中で、創業当初から航空機産業にこだわった小さな町工場がある。 航空機産業と言っても、新規製造、修理、改造等様々あるが、テックストレーキ(大田区羽田)の引地 正和社長(以下、引地社長)が特化しているのは航空機の修理(官庁、警察・消防・防災・新聞社の取材用ヘリコプター)である。 同社は3年前に大田区創業支援施設(BICあさひ)で創業し、高精度の3Dスキャニングやリバースモデリングの技術を活かし、出張型の3Dスキャニング・ハンドメイド板金事業を展開している。引地社長一人での経営ではあるが、その高い技術力は大手飛行機修理・改造メーカーからも高い評価を得ている。

取材用ヘリコプター okusyu1710_02.jpg

創業により区内外に人脈が広がる

 

テックストレーキ(大田区羽田)の引地正和社長

 

創業の原動力になったのは、航空機産業への熱い思いであった。引地社長は北海道にある航空機整備の専門学校を卒業後、板金加工を専門とする航空機修理会社に勤め、航空機の機体構造修理や修理用板金部品製造の仕事に関わった。 飛行機用に設計・開発された部品であっても既存の機体と干渉し、図面通りに取付けられないことが多くあった。最新の3D技術を用いれば正確な測定ができ、コスト削減や工期短縮に繋がると考えた引地社長は会社を辞め専門学校へ通った。そこでCAD設計技術を身に付け、1級工場板金技能士の資格を取得し起業した。「今までやってないことに挑戦してみたのが、結果的にはスキルアップし起業の役に立った。」(引地社長)

引地社長は前職に在職中に、3Dプリンター・3Dスキャナー関連の展示会に行った際に協会のブースを訪ね相談したのが創業のきっかけとなった。「創業者向けの支援メニューには事業計画書作成や営業活動、契約書作成ためのアドバイス等様々あり、開業資金の全額利子補給は創業を後押してくれた。」(引地社長)

大田区には板金加工をはじめ、金属絞り、メッキ・表面処理、熱処理加工等得意な技術を活かし航空機産業へ参入している企業がある。「区内には多種多様な企業が集積し協力いただける町工場が多くある。羽田空港や品川にアクセスしやすく、出張が多い当社にとっては最適な場所である。」(引地社長)
東京都のAMATERAS(東京地区航空宇宙部品製造企業連合)やT-MAN(東京地区飛行機産業コミュニティ)の企業ともネットワークが広がり、医療機器やオリンピック種目であるスポーツライフルの開発等、新たな分野にも挑戦し、更なる飛躍が期待される。将来は、3Dスキャニングから設計、製造、機体への取り付けまで全て自社で行いたい、と引地社長の展望は広がる。

創業はアイデアをカタチに

 

ひかり屋根の重永幸年社長

 

屋根関係の大手企業を定年退職後、退職前から温め続けていた「天窓の明るさ活用」と「既存課題解決」を事業化したのがひかり屋根(大田区羽田)の重永 幸年社長(以下、重永社長)である。重永社長は3年前に大田区創業支援施設(BICあさひ)で会社を立ち上げた。

国内で天窓メーカーがたくさんある中で、「絶対」雨が漏らない、といえるものを作るのは難しい。ガラスが割れたら天窓から雨が漏れるのは当たり前だという考えがあるからだ。 創業後、重永社長は前職での経験を活かし、漏水テストを重ね、施工性と防水性に優れた光拡散型天窓(拡散板付の天窓)の研究開発に本格的に取り組んだ。 光拡散型天窓は、強い直射日光や紫外線を防ぎ、ムラのない明るさになるのが特徴である。自然な色合いとなるため、照明器具以上に心身に優しい灯りを得ることができる。雨水の処理や光拡散性等の技術的優秀性が評価され、「大田区中小企業新製品・新技術コンクール」で「おおたECO推進賞」を受賞した。「コンクールでの受賞は非常に励みとなった。副賞として今年12月にビッグサイトで開かれる展示会に褒賞出展する機会をいただき、設備もなくまだ知名度もない当社にとっては製品を広く知っていただく絶好のチャンスだ。」(重永社長)

 

ガラスが割れてしまった時でも雨が漏れない技術は特許申請が済み審査中である。水密・正圧・負圧試験等品質の確認とコスト低減に向けて今日も重永社長は奮闘中である。大手鋼板商社による商品化や、光拡散型天窓商品開発でのノウハウを活かし、医療分野や介護施設への提案も視野に入れる等、今後更なる事業展開が期待される。

2017.10.2
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