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- > ものづくり技術を大田区のお土産に! ~「大田のお土産100選」でB to C市場への参入を狙う~
2018年01月04日 公開
「大田のお土産100選」は、昨年度より開始した表彰事業で「これぞ大田のお土産!」と銘打つ製品・商品(事業者)を表彰している。「お土産」と聞くと、「食品」を思い浮かべる方が多いと思われるが、「大田のお土産100選」は大田区ならではの「ものづくり(雑貨含む)」からも表彰しているのが特徴だ。
この度、「ものづくり」表彰製品・商品(事業者)にまつわる興味深い話が舞い込んできたため、製品・商品開発から今後の展開までを以下に紹介していきたい。
株式会社タシロイーエル(大田区南六郷) 「精密独楽」 代表取締役 田代 信雄 氏
同社は難切削加工技術等を得意とする精密加工事業者。平成16・21年度に大田区「優工場」に認定され、航空宇宙関連部品等を製造している。
「精密独楽」は同社の技術力が詰まった一品で、手回しで最高10分間回り続ける驚くべき性能を持つ独楽だ。実はこの独楽、お正月用の独楽としてご家族のために遊び心で製作したのがきっかけとのこと。思った以上によく回るため、自社の技術力のPRになるのではと思い立ち、改良を重ねて現在に至る。「精密独楽」は展示会等で活躍しており、「おっ?」と目を引くその姿と、延々と回り続ける性能が同社の技術力を物語る。「大田のお土産100選」に応募したのも、売上のためではなく技術力のPRのためだという。
表彰から1年が経ち、喜ばしいニュースが届いた。この度、一般社団法人大森医師会の創立70周年の記念品として「精密独楽」が選ばれ、450個もの受注を受けることになった。突然の大量受注に工場は騒然となったが、同医師会のロゴマークを「精密独楽」に印刷するなどオーダーメイドにも対応し、好評を頂く結果となった。
今後の意気込みを伺ったところ、東京2020大会に向け、海外向けの製品を考案中とのことだ。「ロケット部品を手掛けている職人がつくった」等の、ストーリー性がある製品を考えているようで、社長の遊び心が再び多くの人の心を掴む時も近いのではないか。
堤工業株式会社(大田区西六郷) 「小梅つつみ」 代表取締役 栗原 良一 氏
同社は薄物樹脂の切削加工を得意としており、今年度、大田区「優工場」と「大田のお土産100選」をW受賞した勢いのある事業者である。
樹脂を取扱う事業者が頭を悩ますのが大量に出る廃材だが、同社はそれを巧みに活用してプラスチック製のピアス「小梅つつみ」をつくり上げた。大田区の花と鳥である「梅」と「うぐいす」を型取ったピアスを手づくりのケースに飾り、おしゃれで可愛い仕上がりとなっている。 同製品が生まれたきっかけは、なんと宴席の場だという。栗原社長は下町ボブスレーの仲間や区内メーカーの技術者、デザイナー等、幅広く交流があり、宴席の場で「このメンバーで何かつくれないか」と話題になった際、「大田のお土産100選」の話を切り出したそうだ。大田区のものづくりの魅力を発信することを第一の目標に掲げ、第二の目標は宴席の場らしく奨励賞以上を受賞すると獲得できる賞金(最高30万円)で、賞金獲得に向け「暴飲暴食の会」と呼ばれるプロジェクトが発足し、それぞれが強みを生かして設計、製作、PRまでを完遂させる敏腕ぶりを発揮した。残念ながら今年度は賞金獲得には至らなかったが、今後も賞金獲得に向けた挑戦を検討されている。また、「大田のお土産100選」をきっかけにBtoCへの本格参入も考えており、同社ホームページに「小梅つつみ」を掲載し、順次拡大する計画だ。区内企業の精鋭が集う「暴飲暴食の会」の今後に期待したい。
今回紹介した2事業者は、どちらも開発のきっかけは遊び心であった。BtoCへの参入に高い障壁を感じるものづくり事業者は多いが、案外、遊び心でつくったものが消費者の心を掴むのかもしれない。この記事をご覧のものづくり事業者の皆様も、この機会に遊び心あふれる一品を生み出され挑戦されてみてはいかがだろうか。
2018.1.4
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