2018年05月07日 公開

3Dプリンターの可能性 ~大田区企業との親和性と協業の展望~

近年、欧米ではハイエンド3Dプリンターを活用したアディティブ・マニュファクチャリング(以下、AM 注)による製品の製造が一般化しているが、日本では大手製造業のAM導入は見られるものの、中小製造業ではやや遅れている感がある。特に、金属3Dプリンターについては、工業集積地である大田区において導入例が少ない現状であるが、世界市場では金属3Dプリンターの需要が拡大しているようだ。

金属3Dプリンター EOS M 400-4
金属3Dプリンター EOS M 400-4

今回、取材したEOS Electro Optical Systems Japan株式会社(横浜市港北区:以下、EOS Japan)は、1989年にドイツで創業された3Dプリンターメーカー「EOS」の日本法人である。EOS社は1997年から日本の総代理店を担う株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ(大田区西蒲田:以下、NDES)と協業している。EOS社は日本国内の事業強化を見据え、2017年8月にEOS Japanを設立した。

3Dプリンターの世界市場シェアは、米国の大手メーカー2社で7割以上のシェアを占めているが、金属3Dプリンターはドイツが約8割と圧倒的なシェアを誇り、その内、EOS社が約4割のシェアを占め世界シェアトップである。このEOS Japanに、大田区企業で営業・技術者として活躍された高畠一馬氏が転職され、ご挨拶をいただいたことをきっかけに現状の3Dプリンターの市場動向をお聞きすることができ、今回の取材に至った。

エアバスA380のプライマリーフライトコントロール油圧部品
エアバスA380のプライマリーフライトコントロール油圧部品
Source: Airbus,Liebherr Aerospace

EOS社が3Dプリンターを導入されている業界は、航空宇宙、自動車、医療スポーツ用品等、多岐にわたっており、また、本国ドイツでは、新たに起業家育成のためのクラスター構築も手掛けられる等、今後、日本市場での躍進が期待される。今回は、この3Dプリンターと中小製造業、特に大田区企業との親和性や協業の展望について伺った。

EOS Japan社の高畠氏
EOS Japan社の高畠氏

「前職在籍時に、医療機器の加工案件が持ち込まれたのですが、非常に複雑形状であることから、自社においても区内の仲間内でも対応ができずお断りしたことがあります。医療や航空機産業の部品加工は要求精度が高いことから高度な加工技術が要され、加工時間も長時間にわたり、材料のロット管理等も労力を要します。従来の工作機械では加工効率も悪く、その際に色々と調べて行きついたのが3Dプリンターでした。(高畠氏)」

高畠氏はこれをきっかけに、3Dプリンターに興味を持ち基礎知識を得るようになったという。その後、人生の転機を迎えられ、縁あってEOS Japanに転職をされる。

アリアン6ロケットのインジェクターヘッド
アリアン6ロケットのインジェクターヘッド
Source: Airbus Defence and Space / Airbus Safran Launchers

3Dプリンターを活用したAMの導入は、現代の技術革新のひとつだが、決して、大田区企業の高度な技術力や事業領域を侵食するものではないと高畠氏は言われる。

「お世話になった多くの大田区企業と、3Dプリンターの協業は可能と考えています。中でも、3Dプリンティング後の後工程や追加工として、ワイヤーカット、微細加工、研磨、熱処理、メッキ等を手掛けられる企業との親和性が高いです。また、本国ドイツでは中小製造業においてもAM導入が活発で、当社の保有する導入ノウハウを活用すれば日本の中小製造業、または大田区企業にも導入が可能と思っています。(高畠氏)」

また、従来の3Dプリンターによる製品生産は、試作品や多品種少量生産向けというイメージが強かったが、現状、3Dプリンターの適用範囲は拡大しており、大量生産の事例もある等、生産メリットの高い活用事例が増えている。

3Dプリンターの導入・活用は、大田区企業にとってマイナスのイメージしか持っていなかったが、今回のお話を伺って、親和性や協業の可能性が高くまた、新たな事業領域の拡大にも繫がるものと感じた。実際の導入については、一朝一夕ではいかないものの、EOS Japanでは新横浜のテクニカルセンターでNDESと連携してAM導入に関するセミナーの開催も随時行っている。まずは、正しいAMと3Dプリンターの知識を習得するために門戸を叩いてみてはいかがだろうか。

お問い合わせ先

EOS Electro Optical Systems Japan株式会社
住所:横浜市港北区新横浜3-22-11 1F
TEL:045-670-0250

株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
住所:東京都大田区西蒲田7-37-10
TEL:03-5711-5350

※参照・参考:「人とシステム NO.89」 編集・発行 (株)NTTデータエンジニアリングシステム
注)AM(Additive Manufacturing) = 付加製造技術:従来の「機械加工」技術では製造が不可能な複雑形状の部品の生産を可能にする装置として、ハイエンド3Dプリンター等が挙げられる。

2018.5.7
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