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- > 「優工場」認定企業間によるネットワーク構築 ~新たな可能性へのチャレンジ~
2019年01月24日 公開
平成7年度、大田区産業振興協会が発足と同時に工場表彰制度 大田区「優工場」がスタート。以降、24年間で延べ255社(実数179社)を認定及び表彰しました。「優工場」は徐々に知名度と信頼度を高め、現在は協会webサイトのコンテンツの中でもアクセス数は常に上位にあります。
平成21年度には初めて認定企業の「交流会」を開催し、多くの企業にご参加いただきました。その後、平成28年度に"仮想プロジェクト"立ち上げを目途とした「グループディスカッション&交流会」を開催。その交流会の中で、参加企業から出たご意見・ご要望を元に、認定企業間の取組みに積極的な企業に働きかけ「優工場プロジェクト」を立ち上げるに至りました。
今回は、その主要メンバーである4社の経営者に集まっていただき、「優工場」について、またプロジェクトのこれからについて、語っていただきました。
「優工場」応募に至るまで
司会 まず、「優工場」に応募した時の思いや動機についてお話しください。
中村社長 私は会社をもっと大きくしていきたいという気持ちで操業していましたが、平成26年当時はまだまだ会社として未熟な部分もあり、まず、「優工場」の資格に達したいという思いでした。「優工場」の認定を受ければ、企業として安心感を与え、人材も採用しやすくなるのではないかと考えました。
笹川社長 私の場合はまだ父が社長の時で、私を鍛えるために、父から「お前が仕切って認定取得のための準備をしろ」と言われました。それが平成16年で、22年の再認定時は、社員のモチベーションを上げて社内を活性化したいと考え、自分の意志で応募しました。
西村社長 平成21年に初めて応募しました。リーマンショックの真っ只中で厳しい時期でした。私としては何かきっかけが欲しくて、藁をもすがるような思いだったことを覚えています。まず、モチベーションを上げることが第一。基本は5Sですから、これならできると。何しろ仕事がなく、毎日掃除して整理整頓する日々でした(笑)。
今岡社長 私は「優工場」の制度があることは知っていましたが、審査が厳しいと聞いていましたので、多少心配もありました。平成24年の応募の際には、社員に大田区から表彰されるような会社であるという気持ちを持つことと、モチベーションを上げて自主性を育てることを目的にしました。
「優工場」認定のメリット
司会 認定後のメリットはございましたか。
中村社長 私は先代から今の場所でやってきました。近隣の住民の方たちには、認定を受けることで安心感を持ってもらうことができたのではないかと思います。
今岡社長 当社も住宅地にあって夜は静かです。機械が動いている音を出さないよう気をつけています。また、目の前が小学校で、子どもたちの見学を積極的に受け入れています。「まちに優しい」が一つの認定要件にもなっているように、仕事の内容を地元に知ってもらうことも大事なことと考えています。1学年150人位を2日掛かりで対応し、今まで延べで1,000人位受け入れています。
笹川社長 「優工場」のつながりで仕事の幅が広がるとは思いませんでしたが、他の認定企業から仕事の依頼がきたこともあります。また、「優工場」の特設サイトを見た研究機関などからの問い合わせも増え、仕事に結びついています。
中村社長 当社も取引先は増えました。私はあまり外との付合いがなく、どちらかというと井の中の蛙でした。認定を機に様々な人と知り合って、自分がやってきたことを外から評価してもらうことができるようになったのは、私にとって大きな意味がありました。
西村社長 交流会などに参加することも意味があります。
今岡社長 名刺に「優工場」のロゴを入れることで顧客に内容を聞かれます。そこから仕事の話につながることもあります。
「優工場プロジェクト」の展望
司会 平成28年からスタートした「優工場プロジェクト」の今後の展望についてお伺いします。
笹川社長 最近は、顧客からの依頼が多岐に渡るようになってきました。材料手配から全てやってほしいという依頼もあり、わからないことも増えています。仕事によっては、全国から外注先を探すのですが、そうか!「優工場」認定企業がいるじゃないか、というわけです。しかし企業名は知っていても、業務内容がわからないではもったいないですよね。まずは大田区から探す、「優工場」のネットワークがうまく構築できればいいと思います。
西村社長 近年は、区内で協力企業を探すのが難しくなっています。私はリーマンショック以降、価格競争はしないと決めています。東京、大田区の仕事は安くない。その代わり品質重視、納期厳守に特化してきました。安い仕事を受ける企業よりも、「優工場」の認定を受けるために努力した企業と付き合うことで必ずいいやりとりができる、良質な製品がつくれると確信しています。これからは安い仕事を取り合うのではなく、得意な分野を分け合っていくことが重要です。「優工場」同士のネットワークが機能すれば、笹川社長が言ったとおり、様々な仕事の話が舞い込んでくる可能性があります。一度「できない」と言ってしまうと、できる仕事までこなくなってしまいます。いかにできない部分を仲間と共有してやっていくかが課題です。
中村社長 webサイトなどを通じて、多種多様な注文がきます。「優工場」同士のネットワークができれば、様々な知識も得られますし、意識の高い方々と知り合うことができると思います。
今岡社長 当社は金型を製作しているので、工程において多様な加工が必要となります。協力会社に依頼していますが、地方の企業ですと時間が掛かり、またサイズも様々ですから、区内で信頼のおける協力会社を探せるようになると大きなメリットになります。
「優工場」信頼関係の構築
笹川社長 私は、「優工場プロジェクト」が新たな取引先の呼び水になると考えています。自社でできない仕事を断らないだけでなく、今まで他の企業にふることは考えてもいなかったような仕事も検討できます。受け身だけでなく、攻めに使えるツールになるのではないかと期待しています。
今岡社長 発注企業側も、従来は何社かに仕事を振り分けていたものの、現在はなるべくなら一社に仕事を任せたいという感じになっています。今まで断っていた仕事を「優工場」で廻していけるような環境を作ることは、非常に有効だと思います。
西村社長 この4人の中だけでも顧客の要望が多様化していることで一致しています。知っていれば仕事を増やせる。30代、40代の経営者は将来について危機感は持っていますが、簡単に工場も設備も人も増やせない。そういう中で、つながりの輪が広がっていくのではないでしょうか。
笹川社長 最初は「優工場」のリスト化、マップ作りでスタートして、近い将来は「優工場」同士で何か新しいものを生み出せるようになるといいですね。
今岡社長 私はメーカーにいたので、やはりオリジナルの製品を作りたいですね。自社の技術だけではできないので、「優工場」の皆さんと連携したいと思います。
西村社長 このような取組みを知って、若い世代が「優工場」を目指してくれればいいですね。
今岡社長 ものづくり自体の魅力を発信できるようになるといいですよね。
笹川社長 友好的なパートナーになるわけです。それを維持するにはお互いに気持ちよく仕事ができる関係が望ましいです。
西村社長 腹を割って話せる仲間に早くならないといけないですね。信頼関係を築き、困った時はお互いに助け合えるチームになることです。
中村社長 リスト化することで企業間が密接になり、様々なことができる信頼関係を結びたいと思います。
今岡社長 私も含め工場の経営者はものづくりが好きです。ものづくりが楽しくて、しかも世の中の役に立っているからだと思います。「優工場」のネットワークを駆使して、ものづくりを中心に皆さんと一緒に発展していくことを目標にしたいですね。
司会 本日はありがとうございました。
2019.1.24