2019年11月20日 公開

自社技術+αでBtoC市場開拓に挑む ~ものづくり技術で大田区を盛り上げよう~

大田のお土産100選ロゴ

「大田のお土産100選」表彰事業(以下「100選」)は、大田区と大田区産業振興協会(以下「協会」)の共催事業として平成28年(2016年)度から開始した。来る東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を前に、「これぞ大田のお土産!」と銘打つ製品・商品を表彰することを目的としている。"食品分野"、"ものづくり分野(雑貨を含む)"の2つの分野から表彰し、4年間で118点が選定され「100選」を上回る結果となった。本号では"ものづくり分野"に表彰されBtoCへの挑戦に取り組んだ事例をご紹介する。

技術×デザインで新たな付加価値を

高桑製作所は昭和38年に蒲田で創業し、当初から匠の技と呼ばれるヘラシボリ・スピニング加工に特化して技術を磨いてきた。加工した部品は電機や建設、船舶設備など多種多様な産業分野で使われている。同社は平成30年度(奨励賞)、令和元年度と2年連続で「100選」に表彰された。表彰されたチタン製の「一枚鉸・ぐいのみ+かたくちSET」「一枚鉸・重ね皿」はいずれも独自の特許技術のヘラシボリによる器である。熱加工でチタンの重厚感を引き出したり、会津漆塗とコラボしたりと装飾性を持ちながら、機能性・デザイン性の高い商品である。

同社は長年に亘りステンレス製キッチンボウルを作り、販促物として取引先へ贈呈してきた。「職人の高度な技術による品で、新たな喜びや価値を感じてほしいという思いが開発の原動力になりました(高桑 英治社長)」。半年間業務の合間に試作と改良を積み重ね、今まで不可能とされた一枚の金属板から二重構造の器を成形する技術を確立し、「大田区中小企業新製品・新技術コンクール」で受賞したことが背中を押す形となり、「職人のヘラシボリ技術を一般消費者へ」との思いを持つようになった。

「『100選』での表彰をきっかけに大手百貨店からの引き合いも来るようになり、製品のデザイン性や内包される職人技に関心を持っていただけている実感があります。表彰された製品・商品の売上は本業の一部にしか達してはいませんが、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて国内外へ更にPRすることも視野に入れています(同)」。

大田区の高度なものづくり技術を活かした商品開発を行い、区内の異業種とも連携し、一般消費者へ「メイドイン大田区の商品」を届けることを目標に同社は挑戦し続けている。

一枚鉸・ぐいのみ+かたくちSET
一枚鉸・重ね皿
高桑製作所 高桑英治社長

製造現場×大学でアイデアをカタチに

三陽機械製作所は昭和23年に千鳥で創業し、70年以上の歴史ある老舗企業である。高度な加工技術が求められるコンプレッサーの部品加工を得意としており、他社では簡単に真似できない技術を磨き上げてきた。加工した部品は産業機器をはじめ、食料加工機械や医療機器など幅広い分野で使われている。また、昨年、同社は山形に工場を新設するなど、更なる成長が期待される企業として注目されている。

同社は平成29年度、令和元年度(奨励賞)と2回「100選」に表彰された。表彰されたゴルファー用の「グリーンフォーク一」は、社員が趣味でやっていたゴルフが商品開発の原点となり、使いやすさや質感、デザインなどが評価された。「一般消費者向けの商品開発はこの時が初めてで、自社技術をPRする良いツールとなり、励みになりました(黒坂 浩太郎社長)」。

その後、実用性と機能性を兼ね備えた商品開発を進めた。社員の出身大(関東学院大学 人間共生学部 共生デザイン学科)の研究室と連携し、「100選」に向けたプレゼン大会を行い、総勢16件の応募の中から最優秀賞として選ばれたデザインを採用し、商品化したのが「置けば地球儀、ときどきカッター」である。同製品は通常の段ボール開梱時に使用するカッターという形に拘らず、金属加工の技術を活かした仕上がりで、球のデザインは様々に変えられる。「大学との連携は、大田区のものづくりを知ってもらうことが狙いです。町工場の知名度が上がることにより将来的には人材採用にも繋がるかもしれません(同)」。

今後も大学や地方との繋がりを大切にし、大田区のものづくり技術を活かしたヒット商品開発に向けて同社は奮闘し続けている。

ものづくり企業がBtoC市場へ挑戦することは決して簡単ではありません。「自社技術+α」で製品・商品開発することにより新たな可能性が期待される。

平成30年度以前の表彰製品・商品は当協会の特設ページでご覧いただけます。

グリーンフォーク一
置けば地球儀、ときどきカッター
三陽機械製作所 黒坂浩太郎社長と緑川玲子さん

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