2021年06月15日 公開

~新たな展開~ 若者が活躍する継承とは 大田の工匠 技術・技能継承

技術・技能の継承は、大きな課題となっています。「大田区ものづくり産業等実態調査」(令和2年3月)では、回答企業の過半数が「影響がある」または「今後影響が出る」と答えています。
過去の受賞企業を例に、若手が生き生き活躍する継承手法をご紹介します。

「社員全員が生徒であり先生」ダイヤ精機株式会社

「社員全員が生徒であり先生である」と語るのは、ゲージや治工具などの切削・研磨加工を手掛けるダイヤ精機の諏訪貴子社長。技能継承において特定のペアを組まず、若手同士が1対1で教えることもあれば、1人が複数に教えることもある。一つの機械・工程ごとにスペシャリストは置くものの、他の工程でも基本的な加工ができる多能工を増やすことで、機械稼働率を上げています。


「今後は、研磨やゲージ製作において日本一を目指す」
(篠原さん)

右:「自分たちの取り組みが評価され、
受賞することできて嬉しかった」(戸田さん)中央は諏訪社長

熟練技術者の退職後に技術を保持

諏訪貴子氏が社長に就任した2004年には職員の90%以上が50代以上という逆ピラミッドの年齢構成でした。そこから、若手の採用と熟練技術者によるOJT形式での技術継承を進め、2019年には20代、30代が過半数を占めるようになりました。熟練技術者が退職し、若手へと移行していく中、独り立ちさせるのに不安の時期もあった、と諏訪社長。しかし、若手の中に自分しかいなくなるという責任感が芽生え、力を発揮した」と当時を振り返ります。

若手同士の継承

若手同士の継承では、技術を教わる側は、自ら手を挙げ教わりに行きます。教える側は「それぞれの工程の持つ意味や理論を教えてから、やって覚えてもらうようにしている」(戸田浩司さん)といい、教わる側も「自分は感覚派でやってみて覚えるタイプ。常に自分の仕事をしている時でも、他の人の作業を見て、手順や作業効率、うまく寸法を出す方法などを理屈として理解するようにしている」(篠原裕さん)と意欲は高いです。諏訪社長は「私が指示しなくても、自分が何をしなければならないのかわかって動いてくれる」と若手の成長に目を細めます。

若手が考えて動く意識を社内に浸透できた背景には、コミュニケーションツールの導入が大きいです。ソフトウェアの開発会社と共同で開発したクラウド型のソフトで、日報や今月の目標、各部門の掲示板や納品・締め日のスケジュールなど各部署の情報を共有化できる。目標に向け全社員が意識して取り組むことができるようになったと言います。
コロナ禍で、半期の売り上げが減少したものの、生産性は改善し、営業利益率は大きく伸びました。「今後は若手も含め、3~5年どのような設備投資をし、技能を上げていくのか。会社のプラスアルファをみんなで考えていきます」(諏訪社長)と先を見つめます。

「若手が育っています」平成30年度受賞 シナノ産業

「大田の工匠 技術・技能継承」は、令和2年度までに29社を表彰しています。平成30年度受賞企業の一社であるシナノ産業でも、その後、若手の活躍が目立っています。

木村のぞみさん
シナノ産業

柳澤かおり社長

技術・技能継承ペア2人を含め、若手がよく育っていると思います。熊谷は先輩社員として、話しやすい雰囲気を出しています。そして失敗を責めないで、失敗をなくすにはどうすればいいか共に考えてくれる。後から入ってくる若い社員も同じようにやってくれるので、助かっています。
技術・技能継承では、まだまだ、下の世代へと引き継いでいかなければならないこともありますが、通常の業務もあるため、時間はかかっていくもの。お手本になる職人がいるので、徐々にやっていけたらと思います。

実務指導者:熊谷誠さん

担当しているのは、汎用の彫刻機やボール盤、フライスなどです。技術の向上を目指しながら、不良対策や業務の改善に取り組んでいます。大田の工匠を受賞後、他の社員に教える機会もありました。指導するときは、1から10まで教えるのではなく、相手にも考えてもらいながら、教えています。
社員が自分の成長を実感してもらうよう、作業の効率が良くなったことや、面取りがきれいにできた時など、誉めることを大事にしています。

若手技術者:木村のぞみさん

最初は教わったものを覚え、まずはできるようになることが先でした。同賞を受賞したことで、工具や刃物など日々アップデートし、改善改良を改めて心掛けるようにしています。自分の後工程に、熊谷さんが仕上げる業務が多いため、熊谷さんとは要所要所で相談しつつ、教わることもあれば、お互いに勉強になることもあります。
経験を積んで、レベルの高い加工機を担当したいと思います。

みなさんの会社で日々取り組まれている技術・技能継承の取り組みを「大田の工匠 技術・技能継承」に応募することで、若手人材確保のきっかけづくりとしてみませんか。

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