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- > 助成金から人材確保まで~協会事業の活用術~
2023年03月03日 公開
合同会社漢満堂の代表である青木氏は、もともとは研究者を志望し大学の薬学部に進学しました。在学中に研究課題を探す中で漢方に出会いました。西洋医学と東洋医学の双方を学ぶうちに、現代の日本人を悩ます病気の多くが、薬理的に痛みを止める、熱を下げるといった効果では根本的な解決に至らない現実に直面しました。
例えば、「肩や腰が痛む」「花粉症がつらい」といったいわゆる慢性疾患の治療では、その場を乗り切るために西洋薬は役に立ちますが、またぶり返すことが多いのです。
一方で、漢方や鍼灸、そして古くから伝わる養生法には根本的な治療の糸口があるのです。
青木氏は、薬剤師の資格とともに鍼灸師の資格も取得、人々が医療にかける時間を最小限にして健康で健全な人生を謳歌する社会を目指したいという想いから漢満堂を創業しました。漢方治療と鍼灸治療院に加え、現在は薬膳八百屋ファルマルシェも運営しています。
今回のインタビューでは、漢満堂のコンセプトと共に、協会事業を活用した成果や今後の展望についてお話を伺いました。
薬膳八百屋ファルマルシェ 外観
会社の創業の経緯を教えてください。
青木氏:もともと漢方や東洋医学が大好きってわけではなく、むしろ怪しいし本当に効くのかな、というくらいの気持ちでした。しかし学んでみると、脈や舌の状態などを診ることで実に様々な体の症状を調べられることがわかり、大変興味を持ちました。
西洋医学は薬や手術によって治療しますが、それは急性疾患に対して効果があるものの生活習慣病と呼ばれる慢性疾患を治すには至りません。
しかし、今、人々を悩ませている病の多くは生活習慣病によるものです。漢方や鍼灸といった伝統医療には自然の中でどう生きるかといった知恵を含んでいるので、現代のような生活に根ざした病の治療を得意としています。しかし、日本の漢方薬や鍼灸治療の使われ方をみると西洋医学と同じようなことをやっている現実がありました。患者が健康になることが医療の本質なのに、真摯に取り組んでいる医療が少ない。ならば自分がやろうと思い、25歳の時に創業しました。
漢満堂 代表 青木氏
薬膳八百屋とはどういったものですか。
青木氏:様々な生活習慣病に対して漢方薬や鍼灸による治療を施すことで回復するものの、治療を止めると元に戻ってしまう人が一定数います。当たり前かもしれませんが、生活習慣病なので生活習慣の改善をしなければ治りません。
健康な生活習慣とは、食と運動と睡眠の質が高い状態で保たれていることが大事です。そこにアプローチするとして、例えば睡眠の専門店というものがあったとしても、敷居が高くなかなか来ないでしょう。また、スポーツジムは運動したい人しか来ません。しかし、食は全ての人が必ず関わる身近なものです。
誰もが来やすくて、そこに医療者がいる。そうしたことに価値があるのではないかと思い、実験的に開いたのが薬膳八百屋です。
どういったものを売っているのですか。
青木氏:八百屋なので、当然ながら野菜を売っていました。そこでアレルギーにはどんなものを食べたらいいか、逆にどんなものを食べたらいけないかなど、八百屋でありながら医食に関するアドバイスがもらえる場を提供しています。
現在は店頭に野菜を置いていないため、薬膳食材や薬膳茶の材料、スパイスなどを販売しながら、来店者の健康相談などを行っています。
大田区産業振興協会の事業を活用してどのような取り組みをしましたか。
青木氏:薬膳八百屋を立ち上げるにあたって、私たちのメッセージを商品に落とし込んで発信していく必要があると考えました。
「繁盛店創出事業」では専門家派遣によりアドバイスをいただき、オリジナル商品の開発をしました。パッケージについては、メインターゲットである女性的なデザインを取り入れ、ギフト需要に合わせた商品ラインナップを展開。価格設定や、商品陳列などについてもアドバイスをいただき、かかる費用の一部の助成を受けることができました。
次に、販路開拓ということでインターナショナルギフトショーへの共同出展や大田区産業振興協会が主催するフード展示商談会へ参加し、多くの引き合いをいただきました。商談がきっかけで大手書店での取り扱いも決まりました。また、イスラエル、ドイツなどの海外販路開拓の話も進んでいます。
また、パッケージのシール貼りやスタンプ押しなどの作業については、内職あっせん相談サービスを利用しました。なかなか人材確保が難しい中で、仕事内容に合う人材をすぐにマッチングしてくれてとても助かりました。大田区産業振興協会が仲介してくれるということで安心感もありました。
今後、どういったサービスがあったら利用したいですか。
青木氏:販路拡大については非常に手ごたえを感じています。もっと回数を増やしたり様々なジャンルの展示会に継続的に露出する場があると嬉しいです。また、こうした支援事業を使いたい人はたくさんいるはずですが、まだまだ知られていないものも多いと思いますので、情報をしっかりと届けてほしいですね。例えば支援事業の活用セミナーなどを開いても良いかもしれません。
今後の目標をお聞かせください。
青木氏:まずは、オリジナル商品である薬膳茶シリーズの販路開拓を進め、軌道に乗せたいと考えています。また、私は大田区鍼灸マッサージ師会の会長でもあるので、今後開業したいという方々を支援したいとも思っています。
新たな事業として、やってみたいことは他業種との連携です。韓国には産後調理院と呼ばれる出産直後の女性の負担を軽減させる施設があります。そこには医療スタッフや調理師、鍼灸師などがいて心身のケアをします。こうした施設が日本にはほとんどないのが現状です。
西洋医学においては妊娠出産中に飲んでいい薬はほぼありませんが、漢方にはむしろ養生的に飲むようなお茶や漢方薬があるので、いつか医療業界などの他業種と連携してこうした施設がつくれたらいいな、と思っています。
その時に大田区などの行政と連携して、利用しやすい価格でサービスが提供できれば出生率の上昇にも貢献できると思います。
ありがとうございました。